調整モデリング

調整モデリング (アーキテクチャー調整モデリングとも呼ぶ) は、概念モデルが維持され、 設計プロセス全体をとおして繰り返し拡張される、混合モデリング概念モデルと似ています。ただし、変換の適用時に、概念的な意味要素がコード要素への参照に置き換えられることはありません。

この手法は、強力なガバナンスを実施する傾向のある組織で、システムを記述する、詳細かつ意味的に豊かな UML 概念モデルのセットを開発する際に役立ちます。

アーキテクトはこれらのモデルからコードを生成し、モデル開発の進行に合わせて再生成することができます。 UML を使用して詳細なクラス・レベル・モデルを作成した後、アーキテクトは この概念モデルに変換を直接適用して、アプリケーションのコード構造 (多くの場合、実際のコンパイル用コード) を生成することができます。

その後、開発者が、UML 表記のダイアグラムでコードをビジュアル編集するか、またはコード・エディターを使用する ことにより、新規コード・モデルの構造ガイドライン内で実装を作成します。コード・モデルの構造を変更する必要がある場合、または開発者がシステムの概要設計に問題を抱えている場合、アーキテクトは提案された変更をレビューし、それを直接 UML モデル内に実装することができます。

開発中のコードに後方変換を適用すると、開発中の状態のオリジナルの UML モデルと比較される 一時的な UML モデルが作成されます。この比較は、調整とも呼ばれます。 この手法により、実装が設計規約を逸脱するとすぐに確認でき、 アーキテクトに変更を依頼することができるようになります。

後方変換は、開発サイクル中に何度も実行されることがあり、設計規約に基づいた厳密な管理を行います。 開発プロセス全体をとおして継続的に開発されるため、UML モデルはマスター・モデルと見なすことができます。

アーキテクトが UML モデルの変換を再適用すると、既存のコードが上書きされるため、アーキテクトは、開発者の細かい作業が上書きされないように、事前に対策を講じます。 このワークフローでは、アーキテクトが 1 つ以上のアプリケーションの設計諸要素を生成しています。このとき、アーキテクチャー的に重要な内容や、設計規約に違反する内容を変更するためのハンド・コーディング・アクティビティーのための余地がわずかに残されます。

用途

調整モデリングは、非常に重要なアプリケーション、および要求および準拠性に関する文書が非常に厳密な場合に最適です。 このプロトコルは、アーキテクトが広範囲に渡ってインターフェースを指定し、開発者がそれらの指定に厳密に従うような、強いアーキテクチャー管理を実践する組織にとって最も有益なものです。

アーキテクチャー上重要なすべての実装要素をモデルの仕様から引き出すことができる場合、また、自動化された変換 (場合によっては定義済みの設計パターン) を使用することによって高い価値が得られる場合に、この手法を使用することができます。このワークフローは、設計作業は社内で行うが、実装は外部委託される場合、または複数のアプリケーションがサービス指向アーキテクチャー (SOA) プロジェクトなどの共通のアーキテクチャー・フレームワークをターゲットにしているため、あるアプリケーション、フィーチャー、またはサービスが他のものと多くの共通点を持っている場合に、特に適しています。

利点

調整モデリングでは、アーキテクトが、アプリケーションのアーキテクチャーに関する意図の完全かつ詳細な表現を保持します。調整モデリングでは開発者に多少の開発上の自由は与えられますが、要求からの逸脱を素早く解決または変更できるように、アーキテクトによる詳細なモニターが行われます。元の設計からモデルが置き換えられないので、 設計とコードを比較対比するアーキテクト用のツールがあります。 調整モデリングはその名前が示すように、アーキテクチャーの変更を管理するための強力な操作モデルを備えています。

考慮事項

調整モデリングでは開発者に開発上の自由はほとんどありません。 調整モデリングでは、モデルの維持にコストがかかる場合があります。 また、最初に設定された設計目標と比較するための、 実装コードの後方変換にもコストがかかる可能性があります。 この手法を選択する組織では、UML のセマンティクスを理解し、詳細な UML 構文を使用して完全なアプリケーションを設計することができるアーキテクトを雇用する必要があります。


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