投資分析では、ビジネス・ニーズについてより適切な決定に達するために、財務測定基準を使用します。 すべての測定基準を分析して、要件に最適な測定基準を判別する必要があります。
複数の測定基準を使用すると、2 つの測定基準が互いに矛盾するように見える状況が発生することがあります。 この例では、そのような状況について説明します。投資収益率 (ROI) は負 (問題のある投資を示す) ですが、内部収益率 (IRR) は正 (優良投資を示す) という状況です。 負の ROI と正の IRR が同時に発生する一般的なシナリオは、最初の期間には利益があるが、その後の期間において損失が発生するモデルで見られます。その損失はその後の期間ごとに大きくなります。 このようなシナリオでは、負の ROI と大きな正の IRR をどちらも確認できます。
前提条件
IRR は、正味現在価値 (NPV) がゼロである割引率として定義されます。 NPV を計算するには、ある期間に取得した利益からその期間に発生したコストを減算した結果に割引率を適用します:
n は 1 からモデル内の期間数を減算した値、r は割引率です。
最初の期間 (i=0) では、割引率は適用されません ((1+r)^0 は 1 であるため)。 i が増えると (1+r)^i が大幅に増加するため、分母 (1+r)^i は連続した期間ごとに増えます。 その結果、分子が大きい場合でも、割引された (benefits(i) - costs(i)) は非常に小さくなります。 最初の期間 (i=0) に利益があり、その後の期間にますます大きな損失が発生し、r (割引率) の値が大きいシナリオでは、分母はすぐに大きくなるため、発生したであろう大きな損失 (分子) を軽減できます。 最初の期間の利益 (NPV 式に従って割引されません) が、割引後の値の合計がゼロになる (またはゼロに近くなる) ようにその後の期間の割引損失を補填する場合は、その割引率によって NPV はゼロになり、正しい IRR 値になります。
- シートで時間グリッド属性が構成されたモジュール: 5 年間の開始日および終了日が同じ「高」、「概算」、「低」、「実際」
- 少なくとも 1 つのコスト・ストリームおよび少なくとも 1 つの利益ストリームを作成する
- 時間グリッド属性の構成時にオプション「投資分析を許可」を選択する
例
この例は、IRR および ROI の計算方法を示しています。 この例では、IRR は、NPV がゼロである割引率です。
- をクリックします。
- 構成した時間グリッド属性が含まれているモジュールを選択します。
- 「属性の追加」をクリックして、属性タイプとして「浮動小数点」を選択します。
- 「タイトル」に IRR、「別名」に NP_IRR、「接尾部」に % と入力して、「OK」をクリックします。
属性 IRR が属性リストに示されます。
- 「属性の追加」をクリックして、属性タイプとして「整数」を選択します。
- 「タイトル」に ROI、「別名」に NP_ROI と入力して、「OK」をクリックします。 属性 ROI が属性リストに示されます。
- をクリックして、時間グリッド属性、IRR および ROI 属性を含むモジュールを選択します。
- 表 1 で示す利益とコストのストリームの値を USD で入力します。
表 1. 負の ROI と正の IRR を持つ財務モデル| 利益 |
コスト |
| 750.00 |
0.00 |
| 1000.00 |
2000.00 |
| 2000.00 |
7000.00 |
| 3000.00 |
13000.00 |
| 5000.00 |
30000.00 |
- 「状態 (Stats)」タブをクリックし、ROI の値を確認します。 ROI が負の値として示されます。
- 「計算器」タブをクリックし、IRR を計算します。 割引率の値はおよそ 3.16 (IRR が 316% の場合) です。
- 高い割引率である 3.16 は、2 年目以降に発生する割引損失の平衡を取ります。 割引率 3.16 でのこの NPV 値は、0 のイプシロン内に収まり、(丸め誤差が原因で) NPV としてゼロが生成されるため、IRR 値が数学的に正しいことを示します。