このガイドは、開発プラットフォーム を Rational® Developer for System z® の使用に切り替える ISPF の熟練ユーザーを支援することを目的としています。 本書では、一部の主要な概念、各種の成果物、さらには、そうした概念と成果物の相関性について説明します。また、ISPF で実行する一部のルーチン・タスクを Rational Developer for System z で実行できる仕組みについても説明します。 本書の最後で、Eclipse のヘルプ機能について説明します。
Developer for System z には、リモート・システム・コンポーネントとワークステーション・クライアント・コンポーネントがあります。 リモート・システム・コンポーネントは一般に、サイトのシステム・プログラマーによってインストールされ、アプリケーション・プログラマーに対して「透過的」です。本書の以降のページで使用する Rational Developer for System z という用語は、リモート・システム・コンポーネントと特に明記がない限り、ツール (Eclipse プラットフォームで動作するグラフィカル・ユーザー・インターフェース) のワークステーション・コンポーネントを指します。Rational Developer for System z は、Rational Software 開発プラットフォームにビルドされる一連の開発ツールです。 Rational Software 開発プラットフォーム自体は、Eclipse プラットフォームにビルドされます (www.eclipse.org)。 Eclipse プラットフォームはフレームワークとインフラストラクチャーの提供者とみなし、 Rational Software 開発プラットフォームおよび Rational Developer for System z はツールのコントリビューターとみなしてください。 これらのツールの提供者からはそれぞれ、Eclipse 上で稼働する、 一連の言語固有の開発ツールが供給されます。 Rational Software 開発プラットフォームからは、Web サイトや Java アプリケーションなどの開発をサポートするツールが提供されます。Rational Developer for System z からは、COBOL、PL/I、 アセンブラーなど、従来の言語で書かれたエンタープライズ・アプリケーションの開発、 保守、Web サービス使用可能化をサポートするツールが提供されます。
Rational Developer for System z は、多くのビュー のセットで構成されています。一般的には、ビューは 開発環境で特定の目的を果たし、コヒーレント・ビューのセット、つまりパースペクティブ は特定の使命を果たします。例えば、z/OS® プロジェクト・パースペクティブは、 「z/OS プロジェクト」ビュー、エディター、「リモート・システム」ビュー、 「チーム」ビュー、「プロパティー」ビュー、 「アウトライン」ビュー、「リモート・エラー・リスト」ビュー、 「z/OS ファイル・システム・マッピング」ビュー、 および「リモート・システム詳細」ビューなどのビューから構成されています。 これらの各ビューで、 ユーザーは特定のタスクを実行できます。これらのビューがまとまって z/OS プロジェクト・パースペクティブを構成します。 このパースペクティブの役割は、CICS®、IMS™、または DB2® 上で実行されるエンタープライズ・アプリケーションの開発および保守をサポートすることです。
ほとんどの オペレーティング・システムでは、ファイルをファイル拡張子で認識および区別 します。例えば、拡張子が .txt のファイルはテキスト・ファイルとして処理され、 拡張子が .html のファイルはハイパーテキスト言語ファイルとして処理されます。 しかし、z/OS システムには、ファイル拡張子の概念がありません。そのため、 各データ・セット・タイプまたはファイルについては、PL/I ソース・ファイルであれ、COBOL コピーブックであれ、ワークステーションにトランスポートされて正しく処理されるように、 Rational Developer for System z で明示的に定義しなければなりません。
ファイル・タイプを定義するのに加えて、 ファイルをテキストとしてトランスポートするのか、バイナリーとしてトランス ポートするのかを指定することも重要です。これは転送モードに反映されます。
最後に、コンピューター・システムは、各システムで指定されたコード・ ページに従って、キーボード入力を文字値へ変換したり、文字値をキーボード 入力へ変換したりします。z/OS システムでは EBCDIC ファミリーのコード・ ページが採用されていますが、ほとんどのワークステーション・システム では ASCII ファミリーのコード・ページが使用されています。この 2 つのオペレーティング・システム間でファイルをトランスポートする際は、 コード・ページ変換を考慮に入れて、宛先システムでファイルが正しく変換され、 表示されるようにすることが重要です。 Rational Developer for System z ではこの変換は自動的に処理しますが、 そのためには、z/OS システムおよびワークステーション・システムそれぞれで 使用されているコード・ページの情報を前もって入手しておく必要があります。 この情報は、ホスト・コード・ページ およびローカル・コード・ページ の仕様から Rational Developer for System z に供給されます。
構成可能なマッピング で、これらの 目的が達成されます。Rational Developer for System z には、セットアップを簡素化する一連のマッピング・デフォルト設定が用意されています。 例えば、デフォルトで、end 修飾子 COBOL が付いたデータ・セットはすべて、 ワークステーションにトランスポートされて開かれたときに、 そのメンバーが COBOL ソース・ファイルとして処理されるように、 拡張子 .cbl およびテキスト転送モードにマップされます。 同様に、end 修飾子「LOAD」が付いたロード・モジュールは、.exe にマップされ、 トランスポートされたときにワークステーション上でバイナリー・ファイルとして処理されます。 各 z/OS システムに、 独自のマッピングを指定できます。「z/OS ファイル・システム・マッピング」ビューを使用することにより、サイトの必要に応じてマッピングをカスタマイズすることができます。
ポートは、 特定の z/OS システムの Rational Developer for System z リモート・システム・コンポーネントと Rational Developer for System z ワークステーション・コンポーネントの間で取り決めた通信チャネルとしてみることができます。 一般に、サイトのシステム・プログラマーであれば、インストール中に「サーバー・ランチャー設定」にある「リモート・デーモン・ポート」または「REXEC ポート」にポート番号を定義しています。z/OS システムに接続するように Rational Developer for System z をセットアップするときに、リモート・システムとワークステーション間の通信を簡素化するために、このポート番号を入力する必要があります。
このビューは、特に z/OS リモート・システムへの接続およびその他の接続を サポートします。接続構成が作成されたら、このビューを使用して、リモート・ データ・セット、ファイル、ジョブなどを参照できます。
データ・セット割り振り、名前変更、または削除 (ISPF オプション 3.2)、 移動とコピー (3.3)、データ・セット・リスト作成 (3.4) などの ISPF ユーティリ ティー機能、およびその他の共通ユーティリティーは、このビューで提供される 機能を使用して実行できます。
同様に、ジョブ・サブシステムに実行依頼したジョブは、z/OS システム接続定義にある JES サブシステムのもとで表示したり、操作したりすることができます。 ジョブのリストを表示したり、ビューの 出力、パージ、キャンセル、保留などの操作をこれらのジョブに実行したりする ことができます。これらのジョブの詳細表示については、 これらのジョブを表形式のビューに表示するオプションもあります (ポップアップ・メニューから「テーブルに表示」を選択)。 この場合、ジョブはさらに ISPF 風の表形式のビューに表示されます。 ジョブ出力を表示するには、完了したジョブを強調表示し、「開く」を選択します。 ジョブ出力は、デフォルト・テキスト・エディターで表示されます。
z/OS 接続構成をセットアップする方法やデータ・セットとジョブを表示するためにフィルターを作成する方法については、『z/OS システムへの接続の作成』を参照してください。
「z/OS プロジェクト」 ビューには、データ・セットとファイルのアプリケーション中心ビューが表示されます。 プロジェクトを作成して、特定のリリースの特定のアプリケーションに 関するデータ・セットとファイルを編成できます。アプリケーション指向の アクション (例えば、デバッグ、ビルドなど) は、このビューでサポートされます。
System z LPEX エディターは、 特に PL/I、COBOL、およびアセンブラー・ソース・ファイルなどを編集するためのデフォルト・エディターです。 System z LPEX エディターは基本 LPEX エディターを拡張して、例えば、 各言語に対する構文検査、コンテンツ・アシスト、参照されるコピーブックまたはインクルード・ファイルを開く機能、およびエディター・ビューからジョブを直接実行依頼できる機能など、System z に固有の機能を提供するものです。 System z LPEX エディターは、 リモート・ソース・ファイルを強調表示して「開く」を選択すると、開きます。 LPEX エディターの使用の詳細については、『System z LPEX エディター入門』を参照してください。
「リモート・シェル」ビューには、TSO コマンドの実行をサポートするコマンド行インターフェースが用意されています。 コマンド行からコマンド、CLIST、および REXX を実行でき、 同じビューに出力を表示できます。コマンド入出力は保存することもできます。
「リモート・シェル」ビューは、 リモート・システム・エクスプローラーで「TSO コマンド」を選択してから、「TSO の起動」をクリックして開くことができます。
「リモート・エラー・リスト」ビューには、 操作の失敗が原因で発生したエラーが表示されます。 エラー (例えば、構文エラー、 ビルド問題、コード生成など) は、この表形式のビューに表示されます。
「プロパティー」ビューには、 現在選択しているリソースの属性および属性値が表示されます。 例えば、「リモート・システム」ビューでデータ・セットを選択すると、「プロパティー」ビューにはその属性 (BLKSIZE、LRECL、VOLUME など) とそれぞれの属性値が一覧表示されます。 同様 に、z/OS システムが選択されている場合は、その接続属性 (システム名、 コード・ページ、ジョブ・ポートなど) とそれぞれの値が表示されます。
Rational Developer for System z ヘルプ情報は、統合された Eclipse ヘルプ・システムを介して提供されます。 これを開くには、「ヘルプ」メニューから「ヘルプ目次 (Help Content)」を選択します。
情報内容は「ブック」形式で編成されています。各ブックには、特定のトピック または領域の内容が収められています。
この内容にアクセスするには、一般に 2 つの方法があります。左側のペインにある ナビゲーターを使用して、参照可能なヘルプ目次を探索するか、または検索機能を 使用して、表示したい特定の項目を検索します。 デフォルトでは、すべてのブックに対して検索が実行されます。検索コンテキストを絞り込むには、「拡張検索」検索範囲オプションを選択することで、 ユーザー定義の検索範囲に検索を制限できます。 検索結果リストが常に長すぎる場合や、関係のない結果が多すぎる場合には、 拡張検索機能を使用するようお勧めします。
情報内容は右側のペインに表示されます。情報を印刷するには、右側のペインの右上隅にある「印刷」ボタンを押して、プリンターの指示に従います。